和菓子は日本の伝統文化と直結しています。
今の和菓子の形が作られたのは平安時代に遡るといわれています。
皇室・社寺・武家などの上流階級と結びついて発展しましたが、
お茶の文化とも係わり、江戸時代には庶民階級も愛好するようになりました。
平安時代に創業した店が今でも営業しているんですよね。
こんな国は他にありません。
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はじまりが皇室や茶道と関連が深かったため、必然的に年中行事と係わりが増えました。
年中行事に季節感をとりいれて演出したものが代表的な季節の和菓子といえるでしょう。
季節の和菓子といいますが、季節といってもいろいろな考え方があるので、
まず季節の区切りについて整理します。
四季(春夏秋冬)の区切りと対応する月
四季の区切り方にはいろいろな考え方があり、厳密にこれというものはありません。
ただ、一般的によく使われているのは気象庁の区切り方です。
気象庁の季節の区切り方
気象庁では、「時に関する用語」として、次のように区分しています。
春:3~5月
夏:6~8月
秋:9~11月
冬:12~2月
天気予報は身近なものですので、この四季の区分が広く使われています。
そのほかの季節の区切り方は
天文学的には、春分・夏至・秋分・冬至を基準にしています。
春:春分から夏至の前日まで(3月21日ごろ~6月20日ごろ)
夏:夏至から秋分の前日まで(6月21日ごろ~9月22日ごろ)
秋:秋分から冬至の前日まで(9月23日ごろ~12月21日ごろ)
冬:冬至から春分の前日まで(12月22日ごろ~3月20日ごろ)
二十四節季を基準とするものもあります。
春:立春から立夏の前日まで(2月4日ごろ~5月5日ごろ)
夏:立夏から立秋の前日まで(5月6日ごろ~8月7日ごろ)
秋:立秋から立冬の前日まで(8月8日ごろ~11月7日ごろ)
冬:立冬から立春の前日まで(11月8日ごろ~2月3日ごろ)
ただ、天文学も二十四節季も太陽の運行を基準としていますので、年によって日にちが異なります。
旧暦での季節の区切り方
春:1月(睦月)、2月(如月)、3月(弥生)
夏:4月(卯月)、5月(皐月)、6月(水無月)
秋:7月(文月)、8月(葉月)、9月(長月)
冬:10月(神無月)、11月(霜月)、12月(師走)
和菓子はその歴史からいって、旧暦と結びついています。
旧暦は、現在の暦に比較すると、1~2ヶ月ほど季節感が進んでいます。その辺りの事情を勘案することが必要です。
今では正月は冬ですが、旧暦では現在の2-3月になるので、初春です。
和菓子の種類・名前はこちらの記事が詳しいです。
以下、気象庁基準の四季をもとに、代表的な季節の和菓子を京都を中心にご紹介します。
春(3月・4月・5月)の和菓子
気象庁基準では、3~5月
二十四節季基準では、立春から立夏の前日まで(2月4日ごろ~5月5日ごろ)
旧暦では、1月(睦月)、2月(如月)、3月(弥生)
引千切(ひちぎり) 3月3日 桃の節句(雛祭り)に
引千切とは、餅と餡(あん)で作られます。餅は白餅に限らず、よもぎ餅などを用いることもあり、餡も粒餡と漉し餡があります。子供の生育を祝うためのお餅です。
白餅を丸く伸ばしてくぼみを作り、くぼみには餡を乗せます。その端の一カ所に引きちぎったような取っ手らしき形を添えます。これが名前の由来です。
あこや貝に似たその形からあこや餅とも呼ばれることもあります。
昔、宮中で人手が足りない時に餅を丸める手間を惜しんで引きちぎったのが始まりと言われます。
京都の雛祭りには欠かせないものとされますが、それ以外の地方でも祝い事に用いられます。
桜餅 3月~4月
桜餅には製法が異なる、江戸風と関西風の2種類があります。
長命寺桜もち(江戸風)
花見団子 3月~4月
赤(ピンク)・白・緑の三色団子で、江戸時代に花を愛でながら菓子を食べる風習が広まったようです。
赤と白が紅白の縁起物、草色は、緑が邪気を払う、という説もありますが正確には不明です。
柏餅 5月5日 端午の節句に(関東)
カシワの葉を用いた柏餅は江戸時代に生まれたと言われています。
カシワの葉は旧暦の5月ごろに新芽が出てきますが、新芽が育つまでは古い葉が落ちないという特徴があります。
そのことから、家の連続、子孫繁栄として端午の節供の縁起の良いお菓子となったようです。
餡の種類は、つぶあん、こしあんのほか、みそあんが一般的ですが、京都では白味噌餡を用います。
粽(ちまき) 5月5日 端午の節句に(関西)
出典:Amazon
ちまきは関西、特に京都では柏餅と並ぶ端午の節句の代表的なお菓子です。
中国由来のものといわれていますが、日本ではうるち米の団子を笹の葉で包みます。
餅の中に餡を包み込んだり、餅を葛餅に替えるなどさまざまなのもがあります。
御所御用達で創業1503年(文亀3年)の老舗「川端道喜」のものが有名です。
夏(6月・7月・8月)の和菓子
気象庁基準では、6~8月
二十四節季基準では、立夏から立秋の前日まで(5月6日ごろ~8月7日ごろ)
旧暦では、4月(卯月)、5月(皐月)、6月(水無月)
水無月(みなづき) 6月30日 夏越祓(なごしのはらえ)に
水無月は旧暦6月の名前でもあります。
京都発祥のお菓子で、白いういろうの上面に甘く煮た小豆をのせ、三角形に切り分けたものです。
京都では夏越の祓が行われる6月30日(旧暦では6月1日)に、1年の残り半分の無病息災を祈念してこれを食べる風習があります。三角の形は暑気を払う氷を表し、上に飾る小豆は厄除けの意味があるとされています。
若あゆ 6月
楕円形に焼き上げたカステラ生地で求肥、若しくは小豆餡をつつみ、半月形に整形し、焼印で鮎の目とひれの印をつけた和菓子です。関西では求肥のみが一般的ですが、関東では、求肥と餡子を使います。もともとは6月の鮎の解禁にあわせて売り出されていましたが、最近ではゴールデンウィーク明けごろから見かけられるようになりました。
岩もる水 7月
「岩から染み出てくる清水」という意味を持ち、緑色の葛が苔むした岩を、白い部分が水を表し、見て食べて涼を感じるお菓子です。葛は消化がよく胃腸にも負担をかけません。
竹流し(竹筒入り水羊羹) 8月
いかにも夏らしく、涼しげな青竹からつるりと出てくる水ようかんです。竹の良い香りがします。
秋(9月・10月・11月)の和菓子
気象庁基準では、9~11月
二十四節季基準では、秋分から冬至の前日まで(9月23日ごろ~12月21日ごろ)
旧暦では、7月(文月)、8月(葉月)、9月(長月)
月見団子 旧暦の8月15日 中秋の名月に 新暦では9月
関東風
関西風
出典:http://daily-life-info.com/
月見団子は地方によってさまざまです。
関東ではオーソドックスな三方に載せてお供えするイメージで、形もシンプルですが、味も砂糖だけのものです。関西の月見団子は里芋のような形で餡子がついています。
お月見は平安時代に中国から伝わった風習で、もともとは里芋を食べることから、里芋の収穫祭であったという説があります。京都はそのイメージを大事にしていますが、関東は江戸時代から始まった町人階級の風習を取り入れています。
栗きんとん 10月
出典:ふるさとチョイス
栗の収穫が始まるこの時期に販売されているのが栗きんとんです。栗に砂糖を加えて炊き上げてつくります。おせち料理の栗きんとん(栗金団)と違い粘り気はありません。
亥の子餅(いのこもち) 11月
出典:京都をつなぐ無形文化遺産
亥の子の日に新穀で作るお餅です。亥の子(旧暦10月の亥の日)に食べられます。
古代中国から伝わり、平安時代の宮中で無病息災、子孫繁栄を願いイノシシの子のような形をした餅を献上する行事として始まりました。紫式部の『源氏物語』にも登場します。お茶では、亥の月の最初の亥の日に「炉開き」を行う慣習があり、茶席菓子 として「亥の子餅」が出されることが多いです。
俳句では冬の季語となってます。
「山茶花(さざんか)の紅つきまぜよ亥の子餅」久女
冬(12月・1月・2月)の和菓子
気象庁基準では、12~2月
二十四節季基準では、冬至から春分の前日まで(12月22日ごろ~3月20日ごろ)
旧暦では、10月(神無月)、11月(霜月)、12月(師走)
木枯らし 12月
木枯らし:練り切り製の葉でこし餡をくるんである和菓子。中の餡や練り切りの種類は様々ですが、色合いや形で季節感が一目で分かるお菓子です。
花びら餅 1月
ごぼうと白味噌もしくは味噌餡とピンク色の餅を、餅もしくは求肥(ぎゅうひ)で包んだ和菓子です。
平安時代の新年行事「歯固めの儀式」を簡略化したもので、長寿を願う新年のお菓子でした。
現在、正月の菓子として定着して初釜にも使われますが、明治時代に裏千家十一世玄々斎が宮中の許可を得て使ったのが始まりと言われています。
鶯餅 2月
出典:春華堂
春告げ鳥とも言われるうぐいすを象った早春のお菓子です。餡を求肥などで包み、両端をとがらせてうぐいすの形にした和菓子でです。うぐいす粉(青大豆からできたきな粉)をまぶしています。
まとめ
季節の和菓子も時代の移り変わりとともに変化しており、和菓子の店によってもその月に出すものは異なります。
形や色で季節の移ろいを感じさせる和菓子は、五感で味わう小さな伝統文化といえます。
是非、和菓子のおいしさを味わってください♪
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