出典:サーモンミュージアム
鮭(さけ)・鱒(マス)といってもいろいろな種類があってこんがらかります。
大体、鮭の英語訳はSalmon(サーモン)だから同じものでは?
単純にそう思ってしまいますよね。
でも、Salmon troutなどという名前もあります。
訳すとサケマスですね?!
川や湖で取れるのが鱒で、海で取れるのが鮭という分類も出来そうですが、
どうもそう簡単なものでもなさそうですが、食材の観点からできるだけ分かりやすく説明します。
まずその名前から見てみましょう。
鮭・鱒・サーモンの分類と様々な名称
サケの系統による分類
出典:サーモンミュージアム
生物の分類は、昔は形の違いで分けられてきました。
しかし、1970年ごろから種の進化・系統の枝分かれを示す「系統分岐」の考え方が主流となり、最近では遺伝子中のDNAを元にして系統図が作られています。
系統的な分類の最新の研究に基づく狭義のサケといえばサケ属(サケ目サケ科サケ属)の魚を指します。このサケ属の魚としては、シロサケ、ベニザケ、ギンザケ、カラフトマス、サクラマス、マスノスケ、ニジマスの7種が代表的な種類です。
また広義では、近年輸入されているサケ目サケ科サルモ属(タイセイヨウサケ属)に属するタイセイヨウサケもサケとしています。
サケ目サケ科に属する魚としては、他にイワナ(サケ科イワナ属)、イトウ(サケ科イトウ属)などもあります。
上記で分かるように学術的分類の狭義のサケ(サケ属)にもサケ・マスという名前が混在しています。その意味ではサケ・マスの区別は無く一括して「サケ・マス」と呼ぶのが正しい理解となります。
日本ではもともとサケ・マスの名称がきわめてあいまいにで、マスのうちで大型なものをサケと呼んでいた時期もあったようですが、現在では一般的にサケといえばシロサケを指します。
サケ・マスの食材・流通面からの名称と特徴
サケ・マスの学術的な分類は上記のとおりですが、食材・流通面からの名称を見てみます。
白鮭(シロサケ)
サケとは普通このシロザケを指しています。
身に赤身が少ないので白鮭。
白鮭は下のように取れる時期・場所によって様々な名称で呼ばれます。
秋鮭・秋味(あきさけ・あきあじ)
秋に獲れるサケで成熟近くの固体。
まだ婚姻色が出る前。鮭の代表です。
銀毛(ぎんけ)
沖で獲れる産卵前の白鮭。
綺麗な銀色のウロコが特徴。
スーパーに並んでいる銀ジャケとは別ものです。
目近(めぢか)
秋あじ漁が終わる頃に獲れる固体。
時不知・時鮭・大目マス(ときしらず・ときじゃけ)
日本の川が故郷ではないと考えられる、婚姻色が全然出ていない若い固体。
夏場に北海道沿岸で獲れる。
鮭児(けいじ)
時不知よりも若く、外見から雌雄の区別がつかない固体で、アムール川系の白鮭。
非常に漁獲量が少なく高価。
ブナ・ホッチャリ
川に入り産卵前の状態を「ぶな」といいます。
川を遡る順にAブナ→Bブナ→Cブナ→ホッチャリと呼びます。
川を遡上するに従って産卵が近くなり、オスは徐々に鼻が曲がり雌雄とも魚体に赤斑が表れ皮が厚くなり価値が低くなっていきます。
ホッチャリは産卵・放精後の鮭で商品価値はありません。
新巻き鮭・荒巻サケ(あらまきじゃけ)
白鮭を沖獲りにした強塩もの。
塩引鮭
最盛期の雄鮭を天日塩で約一週間塩漬けした後、
塩抜きをしてさらに1週間程度晒して乾燥・熟成させたもの。
新潟・村上市の特産品
銀鮭(ぎんざけ・ギンジャケ)
養殖やチリなどからの輸入で安定して比較的安く入手出来る鮭で、
スーパーに塩鮭として切り身で並んでる鮭のほとんどがこれです。
身はきれいなオレンジ色で、脂肪分が多く、焼いても固くなりません。
塩焼き、味噌漬け、ムニエル、フライなど、どんな料理にも合います。
また、海中で養殖されるので寄生虫の心配もありません。
紅鮭(ベニザケ)
色が鮭類の中で最も赤いのでベニザケ。
湖のある川を故郷とします。
旬はシロザケと同じ。
アラスカやロシア産のものが多い
アトランティックサーモン
「ノルウェーサーモン」のことで」、和名は「大西洋サケ」
主にノルウェー・チリで養殖されている鮭。体長1.5m前後になります。
トラウトサーモン・サーモントラウト・トラウト
アメリカで作られたニジマスの改良種を、海面養殖用にさらに品種改良した魚で生食・加工両用として輸入され、体長は50㌢前後と少し小柄です。
回転寿司でサーモンとして提供されているものがこちらです。
キングサーモン
国産・天然のものは「マスノスケ」と呼ばれます。2メートルにもなる大型。
「すけ」とは「大きい」の意です。
高価ですが良質な脂がたっぷり。お寿司などでは定番。カナダ・アラスカ、ロシア産の輸入ものがほとんどです。
カラフトマス・青マス
若いカラフトマスが「青マス」として市場などに並びます(5月から8月頃にかけて)。
桜鱒・本マス
ヤマメが海に出たもの
富山県の[鱒寿司]はこちらです。
サケ・マスの慣用的な分類?
サケの仲間は、
淡水型:淡水で一生を生活するもの
降海型:ある時期、海水で生活をおくるもの
とに分類できます。
英語では、淡水型をトラウトtrout(日本語訳はマス)、降海型をサーモンsalmon(日本語訳はサケ)と呼び、サケの仲間を区別しています。
日本語でも、降海タイプにはサケを、淡水タイプにはマスと付けた名称が多く使われています。
ただそれぞれで例外があり。日本名ではマスノスケKing Salmonは降海型なので、本来であればサケの名称が付けられてしかるべきです。
また英語圏でも、Salmon、Troutの区別のあいまいさは存在し、一例としてヨーロッパでは、降海したブラウンマスをsea troutと呼んでいます。
つまり洋の東西を問わず、サケ、マスは厳密に区別されていないといってよいでしょう。
ちなみにニジマスも、淡水型はレインボー・トラウトRainbow trout、降海型はスチールヘッド・トラウトSteelhead trout、海面養殖されて主にチリから輸入されているものはサーモン・トラウトSalmon troutとかトラウト・サーモンTrout salmonと呼んでいます。これを単純に訳してしまうと「サケマス」とか「マスサケ」ということになりなにがなんだか分からなくなります。
結論としては、
サケ・マス、Salmon・Troutの名称は大雑把にいえば、サケの淡水型・降海型に対応していると言えなくもないが、厳密には一致していないということです。
鮭(サケ)と”カタカナ”のサーモンの違い
サケとSalmon、、、
同じようで違うし、厳密な使い分けもできないという話をしてきましたが、まだモヤモヤしているかもしれません。
理屈はそうかもしれないけど、日常用語としてはやはり違いがあるのでは!ということだと思います。
確かに鮭とサーモンは消費現場では使い分けられているかもしれません。
新巻き鮭とは言いますが、新巻きサーモンとは言いませんね。
また、回転寿司のサーモン・とろサーモンは鮭の生ものではありません。
鮭とサーモンは産地が違う
スーパーなどで切り身で売られている鮭はほとんどが国産の養殖もの、銀鮭です。
値段もサケの仲間では一番安いです。
一方、〇〇サーモンとかいわれているものは、輸入ものが多いようです。
※ただ、最近は地域起こしの一つとして内陸でマスを養殖するケースが出てきていて、ブランド名として〇〇サーモンと名付けているものもあります。
鮭は天然もの、サーモンは養殖で生食が可能?
鮭とサーモンの大きな違いは、そのまま生食できるかどうかで区別することもできます。
スーパーの刺身コーナーで売られているのは全て「サーモン」です。
「鮭」は基本的に天然ものが多いので、アニサキスなどの寄生虫がいる可能性があり、生食には向いていません。
「サーモン」は生育環境や飼料など徹底した管理がなされている養殖ものなので寄生虫の心配がなく生食可能です。
アニサキスの特徴・食中毒事例・予防と除去方法はこちらの記事が詳しいです。
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回転ずしのサーモンは鮭ではありません
回転寿司で人気のサーモン・とろサーモンは鮭(シロサケ)ではなく、輸入物のトラウトサーモンもしくはアトランティックサーモンです。
トラウトサーモンとはニジマスを改良して海面養殖したものでチリー産がほとんどです。
アトランティックサーモンAtlantic salmonは和名では大西洋サケでノルウェーサーモンともいわれますがノルウェーやチリーなどで養殖されたものです。
まとめ
サケ・マス、、、、奥が深いですね。
縄文の昔から日本人の食を支えてきた柱ゆえの曖昧さという気がします。
また、身が赤いので、ひょっとして赤身魚だと思っていませんか?
サケ・マスは赤身魚ではありません。
?と思った人は下記の記事で赤身魚・白身魚の区別を覚えてください。
厳密な使い分けではありませんが、大雑把なニュアンスとしては
サケ・マスは生物学的にまったく同じ。
慣用的には
鮭・サケは国産の降海型で生食は不可
鱒・マスは国産の淡水型で生食は不可
サーモン・トラウトは輸入物で生食可
といえるかもしれません。
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